杉浦経営会計事務所トップ >『税務調査』 無予告税務調査の場合の基礎知識


<その3>
 『税務調査』   無予告税務調査の場合の基礎知識    

現金商売の場合は事前通知は行われないことが少なくありません。
そのほか、重要書類や密告(いわゆるタレコミ)、同業他社との比較などによって
企業の不正計算が想定されるものは無予告調査になる場合があります。


なお、無予告調査の場合、ほとんどのケースで内観調査や外観調査を実施しています。
内観調査は現金商売の企業に対して多く実施されるもので、調査官などが顧客となって
店舗の内部に立ち入ります。
外観調査は、企業内部には立ち入れない場合や、外部から企業の状況を把握したいときに
行われるものです。
外観調査の対象は、企業の店舗や事務所等ですが、経営トップの自宅が対象となるケースも
あります。


           経営トップや税理士とはあらかじめ打合せを!

経理は、無予告の税務調査への対応について、経営トップや税理士と事前に打合せを行っておく
ことが大切です。
たとえば、無予告調査に対し、経理責任者と税理士は都合が悪いので日を改めてもらいたいと
思っていても、経営トップが「後ろめたいことはないので、何でも見てもらえ」などと発言することが
あります。そうすると・・・・「トップの了承を得たから」と、調査官も遠慮なく現況調査を始めてしまい
ます。
企業のトップは“太っ腹”なところを従業員に見せたがる傾向があるので注意が必要です。

無予告調査の場合は、税務署側としても何らかの理由と資料等があり、脱税を疑っている可能性が
非常に高いものです。それをあえて正面から受け止めるということは、あまり賢い税務調査の受け方
ではありません。

決算と申告の時期は、経営トップ、税理士、経理責任者の三者が一堂に会するケースが多いため、
事前打合せのよいチャンスといえます。

税務調査は申告書を提出して2ヵ月半から半年後に行われることが多いので、打合せの際、今後、
無予告調査があった場合に応じるか否か等の方針を明確にしておきましょう。。

もし無予告の税務調査があった場合は、調査官と会話をする前に、真っ先に税理士と連絡を取る
よう、経営トップと経理責任者双方に徹底しましょう。
その理由は、調査官と会話をすることそのものが質問調査という調査方法であり、すでに調査を受けて
しまっていることに他ならないからです。

ところが、そのように企業側にアドバイスしている税理士は、ごく少数ではないかと思われます。
税理士から特別なアドバイスがないときは、企業側から「もし、無予告の調査があった場合、どのような
対応を取るべきですか」と税理士に質問して下さい。
無予告調査は、その企業が何らかの理由で疑われているから行われますが、税務署が持っている情報
がすべて正しいとは限りません。
社内各部署に対しては、「無予告調査があった場合は、冷静に対応するように」と通達しておく必要が
あります。

なお、受付や建物の出入り口付近にいる従業員には「税務署の者ですが、社長に取り次いで下さい」と
声をかけられたら、まず相手の身分証明書を確認し、用件を聞いた後に経理部長等へ取り次ぐことを徹底
させるようにします。



        図表1 調査当日の対応のポイント

 調査官に用件を尋ねるとともに、身分証明書を確認し、全員の所属氏名を控える
   (できれば名刺を受け取る)

 調査官から用件を聞いた後は、直ちに経営トップへ伝え、税理士に連絡する

 税理士と連絡が取れない場合は、経営トップとともに日を改めてもらうように交渉する

 経営トップ、税理士ともに連絡が取れない場合は、経理部長等が責任を持って対応
   できない旨を伝え、日を改めてもらうよう交渉する

 都合が悪ければ、経営トップまたは税理士から「今日は所用で協力できない」旨を
   はっきり伝える

 断りきれない場合は応じる時間や場所を指定し、約束の時間が経過したり応じる場所
   の調査が終了したら引き取ってもらう

 調査官への対応は、基本的に経営トップ、役員、責任者のみが行なう

 現況調査の際、勝手に机の引き出しを開ける等の行為があったときは、調査官に抗議 
   するとともに証拠の保全を行なう

 調査経過を記録しておく

   



                  調査当日の対応マニュアル

 調査当日は
図表1に示した対応のタイミングを押さえることが重要です。
 税理士に連絡を取るタイミングについてですが、無予告調査があった場合、調査官が
 「税理士に連絡を取るように」と言ってくれるとは限りません。

 それどころか、税理士抜きで現況調査を始めようとする調査官も少なからず存在します。
 現況調査が始まってから税理士に連絡を取ったのでは、税理士は何の対応もできない
 ばかりか、当日の他の仕事をすべてキャンセルして調査現場へ駆けつけることになります。

 そうしたことにならないように、税理士には、調査官から「税務調査のために来た」という要件を
 伝えられた直後に連絡をするように心がけて下さい。

 中には、企業に対して「税理士には連絡をしなくてよい」といった発言をする調査官もいるようです。

 しかし、企業が税理士法二条一項一号に規定する税務代理権限証書を提出している場合は、当然
 税理士は税務調査に立ち会う権限があります。
 調査官がどのように言おうと、必ず税理士に連絡して下さい。

 なお、税務調査では何か問題が起きないとも限りません。企業内に勝手に踏み込み、いたるところの 
 現況調査を行なったことがトラブルとなり、裁判になった例もあります。
 後日、紛争が生じたときの備えが必要です。

 具体的には、図表2のように調査経過を時系列で記録しておくことをおすすめします。
   

図表2

10:00  ×××税務署〇〇調査官及び△△調査官の2人が事務所に。

   〇〇調査官  身分証明書を示しながら社長に面談要求
   受付担当  経理部長に取次ぎ
   経理部長  来社理由の説明を求める
   経理部長  社長に連絡不能のため、日を改めるよう交渉
   〇〇調査官 経理方の調査を要求
10:30  税理士到着

   税理士  社長不在を理由に日を改めるよう交渉
10:40  〇〇調査官及び△△調査官  会社を出る



言葉巧みに着手しようとする調査官への対処法
   次に、調査を断る方法も含め、当日の対処法も含め、当日の対処法を会話方式で紹介します。

 受付での基本対応
  
  調査官   (身分証明書を提示しながら)「××税務署の〇〇と申しますが、社長さんはいらっしゃいますか?」

  企業受付  (身分証明書をしっかり確認したうえで)「恐れ入りますが、どのようなご用件でしょうか。
          お名刺も頂戴したいのですが」

  調査官   「用件は社長さんに直接お会いしてからお話ししますので、その旨お伝え下さい」

  企業受付  「当社ではご用件をお聞きしなければ取り次げないことになっています」

  調査官   「大事な用件ですので、すぐに社長さんに取り次いでください」

  企業受付  「当社では、まず、担当部長が対応することになっていますので少々お待ち下さい」

  調査官   「私は社長さんに取り次いで下さい、とお願いしたのですが」

  企業受付  「経理部長の△△が対応することになっていますので。お待ち下さい」

          (受付、経理部長へ取り次ぐ)

  経理部長  「ご用件は?」

 ポイント

    受付も経理部長も用件を聞くまで社長に取り次いではいけません。
    また、社長の居場所やその日の予定なども、軽はずみに調査官に答えないようにします。

 社長の不在を理由に、社長からから電話で断ってもらう場合


  経理部長  「あいにく社長は業務で出掛けています」

  調査官   「では私の前で社長さんに連絡を取って下さい」

  経理部長  「これから社長の携帯電話に連絡してみますので、応接室でお待ち下さい」

  調査官   「私の前で連絡を、とお願いしたはずですよ」

  経理部長  「連絡が取れ次第、電話を代わりますので、応接室でお待ち下さい」

          (社長と連絡を取った後、経理部長、応接室へ)

  経理部長  「社長と連絡がとれました(と言って調査官に受話器を渡す」

  調査官   (受話器越しに)「本日は税務調査でお邪魔しました。ご協力を宜しくお願いします」

  社長     「何の連絡もなしに来られても、都合があって、きょうは会社に帰れません。
           どうかお引き取り下さい」

  調査官   「無理に遠方からこちらへ戻っていただき必要はありません。経理部長さんに対応して
          いただきますから」

  社長     「経理も今日は忙しいようですし、責任者の私が立ち会わなくては協力ができません。これから
           先は税理士さんと話をして下さい」

 ポイント

   「社長の立会いのもとでなければ調査に協力はできまい」として断ります。
   なお、すぐ調査に応じてしまう税理士もいます。税理士に連絡をする際は、企業の都合で当日は対応できない
   ということを強調するようにします。

 外出中の社長に連絡が取れないとして断る場合

  経理部長  「あいにく社長は連絡がとれません。今日は引き取って下さい」

  調査官   「社長さんでなくても。ほかの役員の方にご挨拶したいのですが」

  経理部長  「税務調査の対応に関しては、すべて社長の指示で行いうようにしています。
           社長不在のときに勝手に対応しては、私の責任問題になります」

  調査官   「では、あなたの行なっている業務内容だけでも聞かせてください」

  経理部長  「繰り返し申し上げますが、こういった重要な事項については、社長の許可がないと
           対応できないことになっています。これから税理士さんに連絡いたしますので、後は
           税理士さんと話をして下さい」

 ポイント

    「自分の判断ではどうにもならない」「社長抜きで調査を受けたのでは私が責任を問われる」など
    自分の一存では判断できない旨を伝え、税理士に対応を任せるようにします。


 断り切れなかったときはどうすればよいか


   どのように対応しても 調査を断り切れないケースもあると思います。
   その場合は、「社長が外出するまでの30分だけ」「店の出入り口にあるレジスターの中だけ」
   など、応じる時間や場所、担当者を指定し、約束の時間が経過したり、応じる場所の調査が終了したら
   引き取ってもらうようにします。

   指定時間を越える調査などに対しては、「お約束では30分だけということでしたね。日を改めていただけません
   か?」「お約束したレジのみで簡便して下さい」など、なし崩し的に調査しないよう申し立てます。

   なお、調査の際、勝手に机の引き出しを開けるといったこともあるようです。

   明らかに違法な調査となった場合は、ビデオ撮影等による証拠保全もやむを得ないでしょう。
   証拠がなければ、裁判等になった場合、調査官の言い分が通ってしまうことが多いと考えられるからです。

 

 
 企業は常々正確な記帳と正しい申告に努め、不正防止を心がける必要があります。 
 税務調査のたびに記帳ミスや不正計算を発見されるようでは、次の調査も無予告調査に 
 なってしまうかもしれません。

 不正防止の内部牽制を構築することこそが、無予告調査を防ぐ最善の方法を考えられます。 


原文:「企業実務」 09.9月号  税理士 真鍋輝彦 著より

 事前通知があった際の対応はこちらをクリック 


事前通知が無い場合の対応